鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血とは、酸素を運搬するヘモグロビン(赤血球中に含まれるタンパク質)が正常に働くために必要な鉄分が不足することで生じる貧血です。世界で最も頻度の高い貧血で、日本人女性では約10%が鉄欠乏性貧血を患っていると言われています。そして、特に月経のある女性で多くみられます。
健常な方の体内では、鉄分は「供給」と「需要」(喪失)のバランスをとりながら必要量を維持しています。しかし、何らかの原因でこれらのバランスが負に傾くことによって鉄欠乏性貧血が生じます。
具体的に、「供給」が減る原因として、鉄分摂取低下(食事量の低下、偏食など)、吸収低下などがあります。また、「需要」が増える原因として、体内需要増加(成長期、妊娠、授乳)や出血による喪失(月経、子宮筋腫などの婦人科疾患、消化管出血など)などが挙げられます。
成人の体内には約3~5gの鉄があり、そのうち60%~70%は赤血球の中に含まれていますが、残りは貯蔵鉄として肝臓などの臓器に蓄えられています。そして、体内の鉄分が不足した際に血液に溶け出し不足分を補うようになっているので、鉄が少なくなってもすぐに貧血になるということはなく、鉄が不足した状態が続き貯蔵鉄が無くなることで貧血の症状が出ます。
鉄の欠乏が進むと全身の倦怠感やめまい、耳鳴り、動悸、息切れなどの症状の他に、口角炎、舌炎、嚥下障害などがみられることもあります。
診断は、血液検査でヘモグロビン量(Hb)、赤血球の大きさ(MCV)、鉄量(血清フェリチン値とTIBC値)を計測して行います。
まずは、鉄分が不足している原因を特定し、その治療を行なうことが重要となります。
そして、不足した鉄分に対しては、その鉄分を補う治療が基本になります。鉄分の補充方法はいくつかありますが、最初は鉄剤の飲み薬で治療を開始していきます。
鉄剤には嘔気、便秘、下痢などの副作用がみられることがあるため、継続して治療できるように鉄剤の種類や内服タイミングなどの相談も行っていきますので安心してください。
また、鉄分の補充は、鉄剤からだけではなく、普段の食事からの摂取も重要と言われています。
具体的には、肉類(牛・豚・鳥)、レバーなどの吸収率が高い鉄分(ヘム鉄)を多く含む食品を摂取しましょう(一方、これらの食品には脂質も多く、過剰摂取には注意が必要です)。ヘム鉄よりは吸収率が劣りますが、海藻類、緑黄色野菜、大豆などにも比較的多くの鉄分(非ヘム鉄)が含まれています。
ビタミンCには鉄分の吸収を助けてくれる働きがあるため、合わせて摂取することをおすすめします。
治療のポイントは、貧血が改善した時点で治療を中止してしまうと、貧血が再発してしまう可能性があるため、フェリチン値(体内の貯蔵鉄量の指標)の正常化を目指して治療を継続していきます。
鉄欠性貧血は、鉄分の補給により回復することが多い疾患ですが、鉄不足の状態が続くと日常生活に支障をきたします。当院では内科の専門医もおりますので、めまいや倦怠感、息切れ、動悸など貧血の他に気になる症状がある場合には是非お越しください。
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